はじめに
AIと聞くと「夢のある言葉」と感じる人も多いでしょう。
例えば、ドラえもんは多くの人にとってAIの理想像だと思います。
そして、現代は(やや下火になった感はありますが)AIという言葉が様々なところでもてはやされています。
では、「AIとは何でしょう?」、「AIには何が出来るのでしょう?」、「私達はAIとどう関わっていけば良いのでしょう?」・・・
本書は「私達はAIとどう関わっていけば良いか?」を中心に、これらの疑問の考える手助けとなります。
もし、「AIの仕組み」に興味がありましたら、こちらの記事もご覧ください。
本書の構成
第1章:MARCHに合格 − AIはライバル
本章は、不安を煽り気味ではありますが、著者が知ってもらいたい「現実」を詰め込んでいます。
まず、章のタイトル通り、2016年にセンター模試を受験して偏差値57.1を叩き出しました。
学部・学科にもよりますが、関東ならばMARCHに、関西なら関関同立に合格出るレベルに到達したのです。
続いて、この成果を実現することができた、AI研究の歴史に軽く触れ、現在の中心技術である機械学習やディープラーニングの紹介を行っています。
畳み掛けるように、オックスフォードの研究チームが予想したAI化によって今後10〜20年でなくなる仕事のトップ25が紹介されます。
第2章:桜散る − シンギュラリティはSF
第1章で散々不安を煽りましたが、本章では「AIの現実」について紹介しています。
「AIは一般人レベルの知能を超えたのか?」と早とちりしてはいけません。
AIにも苦手分野があったのです。
それは、読解力と常識です。
1つ、AIが苦手な例題を出します。
AさんとBさんは、一緒にカフェラテを飲んでいました。
Aさん:私は、Bさんのことが好きです。
Bさん:私は、(?)が好きです。
【選択肢】
① Aさん
② カフェラテ
普通に考えれば、「① Aさん」を選びますよね・・・
でも、AIにはこの答えが分からないのです!!
「① Aさん」も「② カフェラテ」も品詞は名詞なので、文法的には間違いではありません。
さらに、言えばBさんはカフェラテを飲んでいるという説明があります。
もしや、答えは「② カフェラテ」の方では・・・
なんて思わないですよね(笑)
つまり、AIはこの文脈を読解した上で、常識を含めた解釈ができないのです。
このような具体例を複数挙げて、AIは何が苦手かを読者へ伝えようとしています。
第3章:教科書が読めない − 全国読解力調査
第2章で、AIの苦手分野を理解した上で、オックスフォードの研究チームが予想したAI化によって今後10〜20年で残る仕事のトップ25が紹介されます。
著作権上の理由でランキングは記載しませんが、残る仕事の共通点はコミュニケーション能力や理解力を求められる仕事となっています。
つまり、人間はコミュニケーション能力や理解力を伸ばすことで活路を見出せる!!
・・・と言いたいところですが、「残念な現実」があります。
著者が、全国の学生を対象に行った「読解力調査」が分野によってはサイコロを振ったときの正解率(ランダム率)よりも低いものがありました。
AIに苦手分野が人間も苦手となると、人間はAIの得意分野で勝負しなければなりません。
・・・勝ち目はないですね。
さらには、最近は数学離れなどと世間では言われていますが、著者は「数学の文章が理解できないから問題が解けないのでは?」と推測しています。
第4章:最悪のシナリオ
AIが進歩し、優秀になるにつれて、人間の仕事が奪われる。
AIの苦手分野を鍛えた人はAIを使う側になり、AIの得意分野でしか戦えない人はAIに使われる側になる。
労働者が分断されたデストピアが現実になるかもしれません。
こうならないためにも、著者は最終章で読解力の重要性を強く主張して本書を締めくくっています。
本書が伝えていること
本書は、読解力という文章、さらには会話を理解する力の重要性を伝えています。
その理由には、「AIに仕事を奪われないため」でもあります。
ただ、それ以上に読解力は仕事を含めた社会生活を送る上で基礎となる力です。
仕事でメールやマニュアルを読んでも意味を理解できない、、、
会話しても何を言われているのか分からない、、、
このような状態では、AIに仕事を奪われる以前に問題があります。
文章や会話を理解する力、更には相手が理解してもらえるように伝える力を育てる重要性をつたていると思います。
最後に
本書は、タイトルが衝撃的で思わず衝動買いしてしまいました。
本書を読む前は、ゆとり世代や最近の学生のことかと思っていました。
しかし、読み進めていくと、だんだん他人事には思えなくなりました。
「本当に自分には読解力が身についているのか?」、「何となくできていると思い込んでいるだけではないか?」と思い、学び直すきっかけになりました。
私は、この本の真のタイトルは「AI vs. 教科書が読めない人間たち」なのではないかと思っています。
みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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